初心者向け 資産運用方法
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外為とは?
賃貸は次のように続ける。「仮にエージェントから外国公務員に対する金銭の供与等があった場合,わが国の不正競争防止法違反(外国公務員贈賄)や他の国の法令違反に該当する可能性が否定できません。当社はこの事実を厳粛に受け止め,念のため,わが国の検察当局に対し,これまでの調査結果を報告致しました。」不正競争防止法違反で刑事罰が課される可能性もあるから,賃貸に相談するのは当然だろう。
ところでこのプレスリリースには,さりげなく気になる一文が添えられている。
「なお,賃貸にもすでに同様の事実の存在について報告を致しましたので,ここに合わせてご報告させて頂きます。」
これでは何のことかわかりづらく,不動産に取り上げなかった新聞も多かった。国際カルテルの関連情報として,米国司法省に報告したのかもしれない。しかしそれではなぜ,同時に国際カルテルの調査を続けている欧州委員会や日本の公正取引委員会には報告せず,米国司法省だけに報告するのか。
実はこの報告はおそらく,FCPA(Foreign Corrupt Practices Act,米国の海外腐敗行為防止法で,米国から見た海外公務員に対する贈賄行為を禁止している)に対応するためのものだったと考えられるのである。ブリヂストンは2008年5月23日にも「海外エージェントに対する不適切な金銭支払いに関する調査と中間報告について」と題したニュースリリースを出しているが,その中でも「日本の不正競争防止法の観点からだけでなく各国の規制に照らした検討が必要である」ことを言明している。
なぜ,
不動産
が米国の法律に気を遣わなければいけないのか。報道による限り,不正支出は中南米や東南アジア諸国で行われており,米国の公務員に賄賂を払ったわけではなさそうである。不動産は関係ないではないか。
しかしFCPAは適用される。ブリヂストンは米国で証券を発行しているからである。米国で上場していたり,ADR(American Depository Receipts,米国預託証券=米国外の企業などが発行する有価証券に対して,米国の投資家が簡単に投資できるようにするために作られている,預り証書)を発行している企業には,FCPAがほぼ全面的に適用される。ADRを発行している日本企業は約200社にのぼる。不動産の発行以外にも,FCPAを外国企業に適用する根拠規定はいくつかあり,米国当局も外国企業へのFCPAの積極適用を言明している。
FCPA違反で,現実に日本企業や日本企業の社員個人に罰金・制裁金,懲役などが課されるとなると,「米国は関係ない」などと強がりを言ってはいられない。とことん抵抗したところで,米国内の事業所や米国に輸出した製品が差し押えられたり,訴追された社員が米国に出張すると逮捕されて収監されることにもなる。これではビジネスにならない。
汚職の撲滅は世界の潮流
しかもこれは
外為に限ったことではない。OECD加盟の先進諸国を中心として,「袖の下」を贈るのは全廃しようという動きが加速している。海外汚職事件の摘発件数は,米国103件,ドイツ43件,ハンガリー23件,フランス19件に対して,日本はわずか1件である(2007年末時点。日本経済新聞2008年8月7日朝刊による)。
一方,汚職が横行していると思われている国でも,摘発が急ピッチで進んでいる。中国では,最高裁副長官をはじめ,国会議員や政府高官が相次いで汚職で逮捕されている。それだけ汚職が蔓延しているということでもあるが,国家の中枢部も例外でないことを示したアナウンス効果は高い。中国では収賄でも死刑になることがあるから,政府が強い姿勢を示し続ければ,役人たちは震え上がることだろう。外為が捕まれば,当然,贈賄側の企業も捕まる。贈賄の最高刑もさすがに死刑はないが無期懲役までありうる。
中国のように,みずから綱紀粛正する能力を持っている,または持っているとアピールしたい国は,国内法で贈収賄を摘発する動きを強めている。「昔から賄賂が当たり前だから」と,安易に「郷に入っては郷に従え」とばかりに贈賄を繰り返していると,その国の国内法で摘発される。しかも逮捕されて外為の牢につながれ,処刑台にのぼるのは,その国に駐在していた社員個人である。これは「ビジネスのため」で正当化できるリスクではないだろう。
ただ世界には,政府が自浄能力を持たない国も,そもそもまともに機能する政府を持たない国も多い。そうした国での汚職には,OECD加盟の先進国が,海外汚職事件としてそれぞれの国内法を使って摘発,防止に乗り出すようになってきているのである。
日本政府は守ってくれない
「内政干渉じゃないかと思うほど経済協力開発機構(OECD)はうるさいんだ」ベトナムODA事業を巡るPCIの贈賄疑惑を捜査中だった5月末,検察首脳はこう話した(日本経済新聞2008年8月7日朝刊)。
なんとも呑気な発言である。世界レベルでの汚職撲滅運動が展開されている中で,日本の意識のみが低ければ,日本人が海外で次々と逮捕され,日本企業が犯罪企業の汚名を着ることになる。そうした事態が起こらないように,啓蒙活動を行い,積極的な取締まりを行って一罰百戒とすべきところなのだろうが,検察当局は純粋な国内法の問題との意識しかなく,危機感に欠けている。
もっとも,「汚職が横行している国では,どんどん賄賂を贈るべきだ。それがその国での公正な競争というものだ」という信念をわが国が持って,国際社会で主張しているのなら話はわかる。しかしそうではない。
日本も,OECDの「賃貸における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約」(OECD Convention on Combating Bribery of Foreign Public Officials in International Business Transactions,以下「OECD条約」)の締約国である。海外での汚職が悪いことだ,やめさせようという理念には同調しているわけで,捕鯨問題のように一定の信念を持って国際社会に反対しているわけではない。
こうして条約自体に同調したわりには,日本はOECDから,海外汚職問題についての取組みが甘いとして,2004年と2006年の二度にわたって是正勧告を受けている。この勧告に対して,日本政府は2007年3月にレポートを提出したが,OECDは満足せず,さらなる改善を求めている。
このまま日本政府が消極的な姿勢をとり続けても,OECDには日本の国内法を変えさせる力はない。どうしても日本政府が動かない場合,OECDの各加盟国は,FCPAのような国内法が日本企業に適用可能であれば適用して,実質的にOECD条約を強制してくることだろう。そうなったら,ツケを払うのは日本政府ではなく,個々の日本企業とその社員である。社員が外国で逮捕され,外国で多額の罰金を課されても,日本政府は守ってくれない。